2024年12月3日火曜日

溶かして生きよう


 この季節になると乾燥で口が荒れるので


毎年メンソレータムを10本くらい色んな服のポケットに


忍ばせておくんですが、今年は5本は洗濯してしまい


洗濯済のメンソレータムは使えるか悩んでる冬が到来しました。



芸術の秋らしく美術館やライブなどに足を運んでは


己の価値観や美意識を高めるだけ高めて、


その後バーに行って全てのことを音楽に溶かして


築き上げた意識を全部忘れる忘却の日々を過ごしてる。


余談ですが、最近お金を何に溶かした?的な話を


友人としたら〇〇に2000万円くらい溶かしたと


笑いながら言ってた吉田は最近一番かっこいいなと思った。






溶かすという表現は損失や無駄というスラング的な言葉だけど


無駄こそ最高の贅沢と思っている私は寧ろプラスの意味でしかない。


色んな意味で溶かしまくってる友人がいるので


みんな経済を回しまくってて心から大好きっす。





玉ちゃんこと玉山拓郎の展示





外に徘徊してる傍ら、寝る前に読書をずっとしてまして


最近読んだ萩原朔太郎さんの「詩の原理」がとても沁みまして。


(宇多田ヒカル様が詩を書く時に参考にしていたと聞いたので熟読)


その中の一節で "時間" と"空間” の話がありまして、


ベッドの中でほほ〜っと感心した一説がこちら。






人間の宇宙観念を作るものはこの時間と空間の二形式で、


この対立を表現について考えると、音楽は時間に属し、美術は空間に属すると。


音楽と美術!って秋の全てじゃないですか。


それを時間と空間で比較すると、、


音楽の魅力は、酩酊であり、陶酔であり、感傷である。


それは人の心を感激の高所に導き、熱風のように狂乱させる。


或いは涙もろくなり、情緒に溺れ、哀切耐えがたくなって嗚咽するetc


それに対して美術の魅力は、何という静観的な、落ち着いた、


智慧深い眼をしていて、対象の本質に突入し、物如を把握しようとし、


見る人の心に或る冷徹とした冷たい水を感じさせるetc


音楽は「火の美」で美術は「水の美」だと。






本当そうなんです。


音楽は熱くなるし、美術及び芸術は心が冷静になる。


主観と客観の主義の違いとでも言いますか。


改めて言語化されて気づく心の在り方にため息がでて


時間と空間の新しい視点を身につけることができたっす。








熱があると言えば、


小旅行で行く特急電車で食べる用の朝のデパ地下での爆買い、


サーフィンで自分より大きな波に突進する海の中、


友人のラブレターの代筆をする原稿、


スナックで知らない人が歌っていたあの歌、


もうどれも私には激アツ熱風っす。






書いてて思ってのはもう秋じゃなくて12月、完全に冬がきてました。


今日も私も溶かしに夜の街に出かけようと思います。





Mark Knopfler  ----  one deep river





2024年10月8日火曜日

愛は変化する

愛って何でしょうか。


ずっと一緒にいてくれることが愛でしょうか。


会いたくても会えなくて相手を想うことが愛でしょうか。


相手が大切にしてるものを大切にできるのが愛でしょうか。


そのままの相手を愛することができるのが愛でしょうか。


赦すことができるのが愛でしょうか。


秋の夜長は良くない妄想が襲ってきては


本当しょうもないことになるので、一人でいることはお勧めしないけど


私は相変わらず一人でミュージックバーを楽しんむ生活を送っている。






すっかり人肌も恋しくなるほど空気が冷えてきましたが


皆様お元気でこの世を生きてますでしょうか?


きちんと自分を甘やかして生きていることを願うばかりです。








8月末にすごく大好きなミュージックバーが移転のために一時閉店になった。


何かにうまくいかないことがあった時や心から疲れた時、


すごく嬉しい時や一人になりたい時、


音楽を聴きたい時や心を落ち着かせたい時、


色々な自分をこのバーで過ごしたもんで大切な場所過ぎて


最後の日は普通に泣いた(時期をあけて移転するだけなのに笑)


名前は知らないけど顔は知ってたり、


絶対話しかけると面倒臭いから最後まで話しかけない人がいたり、


自分と同じようにこのお店が大好きな常連のお客が


いつもはゆっくりとした時間が流れるお店にパンパンに集まっていた。


人も箱(お店 )も移転して変わらないのは分かっているけど、


ここにしかない名前のない空気が最後だと思うとすごく切なく、


こんなに愛されるバーが東京にあるんだと改めて感動した。






最近友人と滋賀のオーベルジュを体験してきた。


オーベルジュは郊外のレストランでシェフが地産の素材を使って


腕を振るう宿泊施設付きのレストランのことっす。


料理の醍醐味ってもちろん一緒にいる人と楽しい時間を


過ごすことだというのは大前提として、


料理って化学って言われてるくらい化学反応と呼ばれる


マリアージュで感動できたら本当幸せなこと。





私生まれてこの方、椎茸が大の苦手でして、、


そこでは前菜で椎茸丸ごとの一品が出てきて一瞬震えた。


炭焼きの椎茸に鴨のハムを削り、檸檬の風合いと


発酵バターと出汁が何とも言えない味わいで、


心から感動し、美味しい美味しいと何度も言った。


こちらがその椎茸なんだけど地味過ぎてなんだこれ。








色々感動した料理はあったけど、


椎茸を愛せるなんて思っておらず、


人生捨てたもんじゃないと思った。


ファッションで例えるとプラダとポールハーデンを


ミックスした感動的なショーだった。







グッと寒くなってきたので秋冬の商品をオンラインでアップしました。


今シーズンのコンセプト的なお手紙は


「Love is the over the rainbow」というお題の通り


愛が虹に消えたというお話です。(どういうこと〜)


商品をご購入して頂いた方にお手紙が同封されてますので


ニヤニヤしながらお読み頂けたら幸いです。


私も早く椎茸みたいな人に出会いたいもんです。






Joni Mitchell  「 River 」













2024年7月5日金曜日

深爪




椎名林檎や宇多田ひかるを聴いていると

女性解放と言わずもがな人間解放的な


本当に自由に生きていいと背中を押され


生き物として自由の根幹の大切さをひしひと感じる暑い夏、


皆様お元気でお過ごしでしょうか。








私事なんですが個人的に爪の白い部分が苦手で


お仕事的にも料理をする衛生的にも断然深爪派でとっても小さな爪なんです。


仲の良い友人のデザイナーも同じ小爪で(爪を見て苦笑する仲)、


だよね〜安心安心、信頼マックスと思って


先日ふと彼女の爪を見ると良い感じに伸ばしてて、


透明のネイルでコーティングされてるのを見て、


自分の価値観が揺らぎました。







他人がネイルしているのはその人の美意識なんで


ノータッチで別に何とも思ってなかったんですが、


同じ人種というか同じような生身プリミティブ人間が


ちょっと美意識に気をつけていると分かると、


私もいよいよか、、と思い36年間野放しにしていた


我が可愛い小爪をケアすることを始めました。


甘皮?をそそくさとケアし、オイルを塗り、


ヤスリ的な棒で形を整え、かまぼこのような板で表面をピカピカに磨き、


保湿液で整えてみました。







世の中の人はこんな大変な思いをして綺麗にしてると思うと泣けてきまして、


本当、爪の綺麗な人只々リスペクトっす。


こんな小さな宇宙のような爪に時間かけて


美意識を上げる世界は自己愛なくしてはできないなと、


ほんのちょっと体験して感じました。


これからネイルをケアしている女性を見る度に、


この人は自己愛があるんだなって思う次第です。


やってみて一瞬テンションあがりましたが、


私は料理したいので即行で白い爪の部分を切り落としました。


たまに飲む友人のおしゃべりおじさんが、


色んな意味でモテたかったら爪は切ってた方がいいと言うのを思い出し、


私はモテたいので深爪派でいこうと改めて思った次第っす。







話を最初に戻って私的に女性解放というか、

解放と自由を感じるアーティストはトレーシーチャップマンっす。

声もビジュアルも含めて当時は男性だと思ってて

透き通る真っ直ぐな声と歯痒い歌詞に胸が熱くなり、

大学生時代にがむしゃらに働いてたバーで聞き入って、

CDを繰り返し聴きこみ、暑い日の労働の曲として染みついた。

人にはその人の時代時代にあった心に沁みる曲があって

好きなアーティストを聞かれたらよく分からない自信を持って

トレーシーチャップマンと答えていけど、何で大切かと聞かれたら

説明のできない胸に込み上げてくる感情が熱くなる曲だからかもしれない。






Tracy Chapman    「 fast car 」






ここしばらく私は生きるのが辛過ぎてブログ書けませんでした。笑

というのは冗談で、ブランドをスタートしてもうすぐ10年くらいに

なるんですが、人生を見直したら見直し過ぎて

どうやって生きたかったんだっけ?状態になってました。

次のシーズン、また新しいことにチャレンジしていく次第なので

爪を短く切ってじっくり頑張って行こうと思います。

トレーシーチャップマンも深爪なのが嬉しいっす。











2024年2月4日日曜日

Feeling good



ラフォーレ前の交差点で帽子から靴まで

全身ピンクの装いをした金髪のギャルおばさんが

ラジオ型のスピーカーを右肩に背負いながら

優里のドライフラワーの曲に合わせて全力で歌い

練り歩いてた横を通った時に、

あぁ東京に出てきて良かったなと

心が軽くなるのは私だけでしょうか。











東京の街中にふと出現する気宇な存在。

見えてるか見えてないかはその人次第で、

気づく人は気づくし見ようとしないと見えない。

それはただ周りと異なってて変だからということで

浮き彫りになっているのではなくて、

ずっといたはずなのに自分のアンテナが

リンクしただけで繋がった存在。

こう思ったきっかけは最近観たヴィムベンダース監督、

役所広司主演の「PERFECT DAYSからモロに影響されている。

観てない方は以下ネタバレになるのでご注意を。

(私はネタバレしてても映画を楽しめる派っす。

好きな映画って内容知ってても何度も感動するし、

捉え方なんて人それぞれだからネタバレしたところで

何やねんと思ってしまう。

性格悪い理由ってここだよね笑)





ストーリーはトイレ清掃員にフォーカスした日常を
丁寧に切り取ったもの。

観た人は口を揃えて役所広司の演じる平山がいかに素晴らしいか、

ヴィムの日本を撮る視点の美しさ、

移動中だけ流れる平山の選曲のエモさなどなど

語り始めるときりがない。

あと書いてて思ったのはやはり映画は

いい表すことができないことを

映像とストーリーに落とし込んでいるから、

こんな陳腐な感想じゃなくて観て感じて欲しい。

百聞は一見にしかずっす。











この映画の中のホームレス役が田中泯だった。

ご存知の方もいらっしゃるとは思うけど

日本を代表する舞踊家で御年なんと78歳。

その田中泯を何と代々木公園に

木漏れ日と黄昏るホームレスとして起用していた。

平山はそのホームレスが見えていて、

喋りかけはしないが何度も目で追うシーンがあった。

あの意図はなんだろうと思っていた。

いてもいなくても完結する存在なのに気になってしょうがなく、

何なら映画の中でとてもポイントになる存在になっている。

監督の意図と私が感じたことが100%合ってるとは限らないし

合ってなくてもそれぞれの解釈でいい。

ただ自分で見える存在を感じることが世界と繋がっていることなんだと思った。

平山の言葉を借りると

「世界は繋がってるようで繋がっていない」

だが、その言葉にも激しく共感した。






観終わった後、映画が良過ぎてパンフレットを買った。

今後この映画を何度も観たいなと思ったし、

作り手のストーリーやインタビューを知りたかった。

その中で田中泯の直筆の寄稿が載っていて、

こんなことが書かれていた。





「オドリは眼に見える擬似が最優先する業界になってしまった。

能力と運動神経そしてリズム感、

スタイルなどがオドリへの評価基準に成っている。

そうだろか。

オドリは言葉を待ち望んでいた人間が始めた

感覚や思いの表出だ。

その証拠に現代でもオドリは言葉に出来ない、

言葉以前、言葉で決定出来ない・終われない物事の

カラダからの表出として現れされる。

感情も感覚と考えるならば、人間の営みは

感覚と活躍とその認知で満ちていたと思います。」










あぁ、何という力強い言葉だ。。

もう泯大好き。

というか本質捉え過ぎて背筋が整う気持ちと

78歳でこんなピュアな心の人がいることに

本当に有難い気持ちでいっぱいになった。

(ありがてぇ〜って何様だよ笑)




ファッションって尖ったことをしてそうに見られがちだけど、

オドリと同じく実はとてもプリミティブなことをしている。

より良い人間になりたい欲の外的なサポートと

内的サポートを一緒にしているし、

着飾るといった原始時代でもやっていたことを

今もやってるアナログな世界だ。

オドリよりも時代の背景や人間観の流れが早いから、

改めて表現することの意味や作ることの意味を

考えされられるとても力強い文章だった。






見えてるものと見えていない世界、

繋がってるようで繋がっていない世界、

それでもクソみたいな素晴らし日々の中で生きてる、

ふとした瞬間に平山になれたらどんなに幸せかと思う。

毎日アトリエに向かって自転車で爆速しながら

音楽を聴く自分と照らし合わせてパーフェクトデイズするっす。








寝る前に思い出すあの全身ピンクの

ギャルおばさんがダントツ素晴らしかったっす。

優里のドライフラワーでも聴いてもらいたいところだけど、

ここはもちろんこの曲で。


Nina Simone     「Feeling good」









溶かして生きよう

 この季節になると乾燥で口が荒れるので 毎年メンソレータムを10本くらい色んな服のポケットに 忍ばせておくんですが、今年は5本は洗濯してしまい 洗濯済のメンソレータムは使えるか悩んでる冬が到来しました。 芸術の秋らしく美術館やライブなどに足を運んでは 己の価値観や美意識を高めるだ...